野球は、日本の球技スポーツにおいては「国技」といっても過言ではない歴史を築いてきました。実は、女子野球も多分に漏れず、現在硬式と軟式合わせると2万人以上の方が、女子のプレイヤーとして野球を楽しんでいます。
そんな女子野球ですが、昨年初めて女子高校硬式野球の全国大会決勝が甲子園で行われたり、プロ野球の西武ライオンズ・阪神タイガース・読売ジャイアンツが公認の女子チームを創設したりと、新たな動きを見せています。そこで、今回はにわかに輝きを放ち始めている女子野球について、紹介していきたいと思います。
これまでの女子野球の歩み
女子というと、野球よりもソフトボールのイメージが強い人が多いと思います。もちろんそのイメージは、オリンピックでの活躍あってのことでしょう。
女子が野球を、特に硬式を続けるハードルが高いのは、「高校硬式野球の試合には、女子が出られない」という点にあります。本当は野球をやりたいけれど、オリンピックに出られる可能性があって、プレイする環境も充実しているソフトボールを止む無く選んだという選手は、これまでにも沢山いたと思います。さらには、高校以降に野球をする環境の少なさもあり、20世紀の終わりまで女子野球は硬式ではなく、軟式が中心でした。
女子硬式野球の本格化
1997年、国内初の女子硬式野球部が神村学園高等部(鹿児島)と埼玉栄高、花咲徳栄高(共に埼玉)に発足しました。
2000年には、駒沢学園女子高と蒲田女子高(共に東京)が加わり、以降10年間は、この5校で高校女子硬式野球の試合が行われていました。
しかし、2010年代に入るとチームは激増、現在では50を超える女子高校硬式野球部が活動してます。競技人口に関しても、統計を取り始めた2015年の1,519人から、2021年には2,533人と順調な増加傾向にあります。これには、昨今謳われている「ジェンダーイクオリティ」も追い風になっているのではないかと推測されます。
ただ、大学に目を向けると、女子硬式野球部があるのは現在10校にも満たず、女子プレイヤーたちにとって満足いく環境とは言えません。大学に通いながらクラブチームでプレイしている選手もいますが、自分の希望する大学の近くで活動している女子硬式野球クラブチームがあるとも限らず、高校卒業以降に女子硬式野球を続ける環境の整備が喫緊の課題となっています。
女子プロ野球リーグ
みなさんは、2010年に女子プロ野球リーグが発足していたことをご存知でしたか?
日本女子プロ野球機構は、京都に本社を置くサプリメント会社である「わかさ生活」が3億円を投資し、2009年に設立。翌年に2チームで始まった初年度のリーグ戦ですが、いきなり1試合2,000人を超える観客動員を記録するなど、人気を博しました。
2013年には全4チームとなり、少しずつその裾野を広げ、2016年には「神スイング」で一躍有名になった稲村亜美選手も話題になりました。各チーム地域密着を目指し、オリックスバファローズとタイアップした神戸での試合では、史上最高の1試合7,823人の観客動員を記録しました。しかし、残念ながら興行として現実的に利益収入を生み出すレベルにはなく、結局一度も黒字収支にすることが出来ず、昨年末から無期限休止状態となっています。
女子野球の現在地とこれから
では、これからの日本の女子硬式野球はどうなっていくのでしょうか?
明るい話題としては、日本野球機構(NPB)所属のプロ野球球団が公認女子チーム設立に乗り出したことが挙げられます。2020年に埼玉西武ライオンズが業界初、続いて阪神タイガースが公認チームを創設し、現在クラブチームとして活動しています。今年は、読売ジャイアンツがチーム創設を宣言しました。女子ジャイアンツには、高校野球の聖地・阪神甲子園球場で開催された初めての女子高校野球決勝で日本一胴上げ投手になった島野 愛友利選手(神戸広陵学園高校)や、イチロー氏のKOBE CHIBENとの試合で一躍脚光を浴びた吉安 清選手(至学館)が一期生として入団しています。
また、現在活動するクラブチームの中でも「ゴールドジム」「ゼンコ―」「エイジェック」など、親会社が主な出資元として、その名前を冠するいわゆる『社会人チーム』のような存在も見受けられます。
もちろんプロ野球という形は、エンターテイメントの究極系の一つではありますが、一つのカテゴリの中で様々な運営体系のチームが存在しながら、小~中規模で持続的な形を形成し、運営していくというのも、これからのスポーツの在り方として模索していくべき形の一つだと思います。プロチームとクラブチームが切磋琢磨し、人気と実力を双方から底上げしていくことが女子野球を継続していく上で、現実的な方法なのではないかと思います。
最後に
プロ野球は、先日のオールスターゲーム 2022を見てもまだまだ人気は衰えるところを知りませんが、これからは何かと話題にこと欠かない「女子野球」にも注目してみましょう。最近では、女子野球YoutuberやTikTokerなども出てきています。ブームになる前に、今からお気に入りの女子野球選手を探してみてはいかがでしょうか。